投資先事例:SCIVAX

田中覚 代表取締役

公開日:2019.11.25

次世代の革新的技術の普及を支える「ナノインプリント」

SCIVAXは「ナノインプリント」と呼ばれる超微細加工技術の事業化を目指す企業です。ナノインプリントは、すでに光学センサーやフラットパネル、バイオなど幅広い領域で実用化が見えてきているほか、今後の普及が見込まれている眼鏡型デバイスやDNAシーケンサーなど、革新的なプロダクトを支える技術としても期待されています。SCIVAXは、この技術の研究開発を長年続けてきており、世界で唯一、光学シミュレーション、量産加工、検査まで一気通貫で提供するナノインプリントのトータルソリューションカンパニーとなりました。この技術が持つ可能性や同社のビジネスについて、田中覚代表取締役にお話を伺いました。

ナノインプリントの事業化に向けて三井物産から独立

田中代表取締役

SCIVAXを立ち上げたのは2004年2月ですが、前身となっているのは三井物産のナノテクノロジー事業です。私とSCIVAXの副社長である奥田はもともと三井物産に在籍し、このナノテクノロジー事業に従事していました。当時は、ナノテクノロジー技術に大きな注目が集まっており、日本政府がこの領域に注力するという方針を打ち出していたほか、アメリカでもナノテクを推進していました。三井物産はこのナノテクノロジーに着目し、産業化を目指してナノテク事業室を立ち上げ、世界中から人材を募って新たに研究所も設立しました。

ただ当時のナノテクノロジーは基礎研究の段階であり、事業化までには長い時間を要することが分かっていました。三井物産ではナノテクの事業化に向けた取り組みを進めていましたが、その間に経営方針の転換があり、ナノテク事業から手を引くことが決まりました。私は、ナノテクノロジーには大きな可能性があると信じていましたし、このナノインプリント技術に惚れ込んでもいたので、思い切って2004年に独立し、奥田とともにSCIVAXを立ち上げることにしました。

スマートフォン内蔵センサーへの活用で注目を集める

ナノインプリントは数十ナノメートルという微細な構造を形成する技術です。ナノインプリントと同様の微細加工を行う装置としては、CPUやメモリなどの半導体製造に使われている露光装置があります。ただ、こうした露光装置は半導体以外の用途には応用しづらいうえ、装置自体も極めて高価です。

一方ナノインプリントは、最初に製造した型を素材に押しつけて転写する型押しの技術を利用したもので、さまざまな素材に転写できるほか、コストを抑えて製造できるメリットがあります。微細加工技術はさまざまな分野で求められていますが、このナノインプリントの技術を利用することで幅広いニーズに応えられます。

ナノインプリントが注目を集めるきっかけとなったのは、スマートフォンに内蔵される、顔認証などに使用される3Dセンサーに採用されたことです。これがきっかけとなり、現在は自動車に搭載されるセンサーなどにおいてもナノインプリントの利用が検討されています。

ナノインプリントを使った具体的なアプリケーションとして、仮想空間を体験することができるVR(Virtual Reality:仮想現実)や、現実の風景にさまざまな情報などを重ね合わせて表示するAR(Augmented Reality:拡張現実)、あるいはDNAの塩基配列を読み取るDNAシーケンサーなどで実用化が期待されています。これらのアプリケーションでナノインプリントが期待される背景には、前述した低コストで微細加工ができるメリットがあります。眼鏡型デバイスの普及や、DNAセンサーが幅広く医療現場で使われるようになるためには低価格化が欠かせません。ナノインプリントであれば、これらのアプリケーションで必要となる微細加工を低コストで実現できるため、革新技術の普及に大きく貢献できるというわけです。

INCJの支援もあって成し遂げられたビジネスモデルの転換

SCIVAXの創業からしばらくは、このナノインプリントを行うための装置を開発・販売していました。しかし装置販売を続けても、SCIVAXの技術やノウハウが外部に流出してしまう恐れがあることに加え、顧客業界の景気の影響を強く受けることになるため、規模の小さいベンチャー企業にとっては大きなリスクが伴います。そこで当社は、私たちの開発した技術や装置を使った最先端デバイスの受託加工に軸足を置くことに決めました。しかし、受託加工に軸足を置くためには、パターンの設計・シミュレーションからナノインプリント、検査・測定まで一貫して対応できる体制を整える必要があり、莫大な設備投資が必要になります。このビジネスの大転換は、ベンチャー企業としての生き残りを賭けた決断でした。

このように装置の販売からファウンドリとしての受託加工への大きなビジネス転換に伴う増資を検討しているとき、既存株主から紹介を受けたのがINCJでした。INCJの担当者は技術に明るく、スムーズにコミュニケーションを図ることができました。

結果的にINCJから支援を受けられたことでビジネスモデルの転換を実現することができました。また、当社は複数の事業会社と資本業務提携を結びましたが、その際にもINCJから適切な助言を頂いたことで安心して事業を推進できました。

この受託加工ビジネスにおいて、プリントするパターンの設計・シミュレーションからナノインプリントの加工、検査・測定まで一貫して対応できるのは世界でSCIVAXだけです。特に設計においては、設計のためのツールを独自に開発可能であるほか、設計したものがナノインプリントで実現できるかどうかの見極めまで対応できます

ファウンドリからメーカーへのシフトが目標

ナノインプリントの市場規模は今後ますます大きくなると考えられています。具体的な領域の1つがセンサーで、モノをインターネットにつなぐIoT(Internet of Things)の普及により、あらゆるモノにセンサーが付けられるようになるだろうと言われています。特に光を利用したセンサーではナノインプリントの技術が大きな役割を果たします。このようなニーズの高まりに対応するため、当社は富山県に最新性の設備を有する工場を開設し、規模の大きな量産加工受託にも対応できる環境を整えました。

今後は、顧客のニーズに対応するだけでなく、当社でデザイン・設計を行って顧客に提案していく、さらには当社独自の製品を開発するということも視野に入れています。このように、ファウンドリ(工場)からメーカー的な立ち位置へシフトすることが我々の次なる大きな目標です。

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