投資先事例:インキュベーション・アライアンス

村松一生 代表取締役

公開日:2018.01.26

世界初、新素材グラフェンの大量合成技術で、IoT社会の実現に貢献

インキュベーション・アライアンスは、放熱素材として注目されている新素材「グラフェン」の製造と実用化を目指して、2007年に設立されました。同社は、量産が困難だったグラフェンの大量合成に成功し、さらに成形や立体加工までを可能にする技術として確立しました。神戸製鋼から独立して、同社を起業した村松一生代表取締役にお話を伺いました。

新素材「グラフェン」にフォーカスして起業

インキュベーション・アライアンスを立ち上げる前は神戸製鋼で勤務していました。神戸製鋼では、社内ベンチャーとして事業をいくつか立ち上げており、その中に新しいカーボン素材を事業化するプロジェクトがありました。わたしはそこで研究開発者として携わっていましたが、1990年代後半の不況により、会社としてほとんどの新規事業が撤退することになってしまいました。そこで、もともとビジネスや新規事業に高い関心があったわたしは、このカーボン素材開発の経験をもとに起業する決心をしました。同社からの個人の起業は珍しく、かなりの勇気が必要でした。実際、2000年ごろから準備を始め、退職して起業に至ったのは2007年のことです。

補助金とネットワークでギリギリつなぐ命綱

創業1~2年目は、前職の神戸製鋼から市場調査などの業務委託をいただき、その収入を小規模な研究開発に充てていました。アパートの押し入れを使って開発していたので、自分でも「押し入れベンチャー」と呼んでいました。しかし、本来、目指しているのはこうした小規模な開発事業ではなく、量産を含む大規模な素材事業でした。それには今とは次元の違う多額の資金を調達しなければなりません。そこで、さまざまな補助金や委託事業に応募しました。その結果、立て続けに新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と経済産業省の補助金の交付対象として選ばれたのです。起業して3年目のことでした。

しかし、こうした補助金は1年間で支給が終了してしまいます。研究開発に加え、社員への給与支給も必要なため、継続した資金が必要でした。そこで、翌年も補助金の申請をしましたが、今度はなんと全滅でした。悲嘆にくれている時に、たまたま神戸製鋼の元上司のつながりでエア・ウォーターから出資をいただけることになりました。ギリギリのところで資金がつながったというわけです。

産業革新機構との出会い

このように、明日会社がどうなるかわからないような状況に苦労しましたが、その後少しずつ軌道に乗ってきました。しかしながら、新素材の事業は研究・開発に時間がかかるビジネスです。これからの長いスパンでの研究・開発のため、新しい出資パートナーを常に探していました。

結果的に産業革新機構との出会いに繋がる開発事業に恵まれました。マイクロソフトのヘッドマウントディスプレイ「ホロレンズ」向けの放熱部材開発です。マイクロソフトがわたしたちの技術に注目してくれて、共同研究を進めることができたのです。これが実績となり、当時、研究開発の支援をいただいていたNEDOから産業革新機構を紹介してもらったのです。ベンチャー企業への支援を行い、日本の素材産業の強化を目指す産業革新機構の方針は、わたしたちの事業テーマにも合致していました。新素材開発に必須となる長期的視野での資金提供、経営サポートを期待できるパートナーは産業革新機構をおいて他にはありませんでした。

量産プロセスを確立し本格量産へ

産業革新機構からの資金の用途は、おもに設備投資と人件費です。設備投資は、グラフェンを放熱部材に加工する製造プロセスに対して行っています。すでに小規模な量産プロセスを世界でもいち早く確立し、量産レベルでも製造できることが実証できたので、次のフェーズでは、より一層本格的な事業化(量産化)に向けた開発を加速します。生産量は月に30トン、売上は年間約60億円になる予定で、この量産規模を4~5年で実現したいと考えています。

新素材の主な用途として期待されるのは、スマートフォンやタブレット、パソコン、ノートブックPC、そしてヘッドマウントディスプレイ。これからのIoT社会の実現に向けて、インキュベーション・アライアンスが開発・製造する新素材グラフェンで世界に貢献していきたいと思っています。

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