投資先事例: ASTROSCALE PTE. LTD.

岡田 光信CEO

公開日:2017.12.05

より持続性のある宇宙開発のために、スペースデブリ除去に取り組む

2017年7月14日 新たな資本提携に関する記者発表会

地球周辺を漂う宇宙ゴミ―スペースデブリ問題の解決は、世界の宇宙ビジネスの重要課題です。スペースデブリの回収・除去の事業化を目指すベンチャー企業、ASTROSCALEの創業者である岡田光信CEOからお話を伺いました。

スペースデブリを除去できるただひとつの会社を目指して

昨今、宇宙関連産業は世界的に活発化し、人工衛星の数は増え続けています。それに伴って、宇宙には不要になった人工衛星やロケットの破片などのゴミ(スペースデブリ)が急速に増えており、宇宙開発の大きな課題となっています。

2013年当時、この問題に興味を持ったわたしは、いくつもの宇宙関連学会に参加しました。ところが、月面探査や新型ロケット・衛星などについて様々な具体的なビジネスが議論される中、スペースデブリ専門学会ではビジネスとして「アクション」するための議論がまったくありませんでした。「ならば、自分が『アクション』しよう」と思い立ち、学会の10日後に作った会社がアストロスケールです。

デブリ除去は、ビジネスとしての市場がないことや、超高速移動するデブリを捕捉する技術がないこと、さまざまな法整備がされていないこと、莫大な費用がかかることなど多くの課題がありました。しかし、「市場は作ればいい。むしろチャンスだ」ととらえ、今では、スペースデブリを除去できるただひとつの会社として、自社の衛星を宇宙に送り出す目前にまで到達しました。

社会的課題を民間で解決する――官民ファンドとしての意義

スペースデブリを除去するための技術を開発し、ソリューション提供するのがわたしたちのビジネスですが、そのプロセスにおいては莫大な資金が必要です。資金調達は常に重要な課題です。

実は初めから、「出資いただくなら産業革新機構に」と考えていました。

スペースデブリ除去は社会的な課題です。政府の補助金などを受けるのが第一歩と考えられがちですが、わたしはそう考えてはいません。この事業は今後何十年も継続しなければなりません。だからこそ、政府の一時的な補助金などに頼るのは難しいし、そうしたくありませんでした。産業革新機構は、官民ファンドとして社会的意義のある案件を支援し、最終的に国の手を離れて民間に独り立ちさせるのが使命だと考えています。これはわたしたちが目指すスペースデブリの除去事業の将来の姿とも合致します。ですから、産業革新機構から支援いただくことは、資金そのもの以上に大きな意味があるのです。

ヒト、ノウハウ、そして「しびれる共感」まで

アストロスケール工場内風景。壁には松本零士氏寄贈の作品が。©ASTROSCALE

産業革新機構との付き合いは資金だけではありません。
産業革新機構の担当者とは、取締役会で、具体的な戦略や方向性など、様々な議論やアドバイスをいただいています。また、産業革新機構は多くの企業や政府機関にネットワークがあり、それらを通じた相談ができることも大きなメリットです。

さらに、わたしたちの事業に対する産業革新機構のみなさんの共感。これも大きなポイントです。産業革新機構はわたしたちの事業に「我がこと」として関わってくれます。このような新規ビジネスは、立ち上がるまでに大変な時間がかかります。ビジネスが軌道に乗るまで、当然、具体的なリターンはありません。その間の孤独と不安、プレッシャーは想像を絶するものがあります。産業革新機構からはこの事業の社会的な意義に共感いただき、同じ船に乗って、同じ成果を目指す―その意気込みがひしひしと伝わってきます。これは正直、涙が出るくらいありがたいです。まさに「しびれる共感」です。

そして、わたしたちはベンチャー企業なので、産業革新機構の出資事実によって信用が高まることも大切な効果と考えています。こうした資金やノウハウ、マインドなどすべての面からの産業革新機構の支援が、今のアストロスケールを支えてくれているという実感があります。

いよいよ試験衛星打ち上げへ

いよいよ今年から来年にかけて、微小デブリ計測衛星「IDEA OSG1」を打ち上げる予定です。さらに2019年前半にはデブリ除去衛星実証機「ELSA-d」の打上げも計画しています。いままでの常識では考えられない、安価なサービスを提供できるビジネスモデルも準備できつつあります。今後もさらに加速して事業化を進めていきたいと思います。

2017年8月就任のクリストファー・ブラッカビーCOOと。中央は、デブリ除去衛星実証機「ELSA-d」

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