投資先事例:ステラファーマ

浅野 智之 代表取締役社長

公開日:2020.03.31

がん細胞をピンポイントに破壊する最先端のがん治療「BNCT」

ステラファーマは、新たながん治療法である「BNCT(Boron Neutron Capture Therapy:ホウ素中性子捕捉療法)」に活用される、ホウ素薬剤を製造している企業です。BNCTは放射線治療の一種であり、がん細胞をピンポイントに破壊できる革新的な治療法として注目されています。BNCTの研究開発は、アメリカでは1950年代から臨床研究が行われていますが、現在では日本の研究が世界をけん引し、医療現場からも大きな期待が寄せられています。ステラファーマの浅野智之代表取締役社長に、BNCTによる治療やそれにかける思いについてお話を伺いました。

なぜ、がん細胞をピンポイントに破壊できるのか

私たちが研究・開発を行っているBNCTと呼ばれるがん治療は、がん細胞をピンポイントに破壊することができる画期的な治療法です。BNCTの仕組みは、まずホウ素(10B)を含む専用の薬液を患者さんに点滴し、その後、患部に対して体外から中性子を照射します。がん細胞に集まったホウ素(10B)が中性子にぶつかると核分裂反応が起こり、ホウ素を含んだがん細胞が選択的に破壊されます。

この治療法の原理原則は1930年代にアメリカで誕生し、その後、日本では1960年代に臨床研究が始まりました。我々ステラファーマの親会社であるステラケミファが持つ技術を用いてホウ素(10B)を安定供給できるようになったことで、BNCTは大きく前進しました。

国の各機関からの支援も後押しとなり、異業種から医薬業界へ参入

ステラファーマの母体となったステラケミファ株式会社は、半導体や液晶、リチウムイオン電池などの製造に必要となる化成品を製造するメーカーです。このステラケミファが持つ技術の一つに、自然界に存在する質量数10のホウ素「10B」と質量数11のホウ素「11B」を分離・濃縮する技術があります。BNCTに必要なホウ素はこの「10B」であるため、BNCTによる治療にはステラケミファの技術が不可欠となります。

10Bのみを分離・濃縮するには「BF3」と呼ばれるガスを安全に扱う必要があり、このBF3を日本国内で安全に使えるのはステラケミファだけです。極めて独自性の高い技術であることから、新たな用途の開拓に乗り出しました。このとき、当時京都大学の教授だった小野公二氏からホウ素(10B)を使ったBNCT治療のための薬液の製造を依頼されました。小野氏は、BNCTの開発にステラケミファが持つ技術が活用できると考えていたのです。

ただ当時のBNCTの治療は、原子炉実験所を用いる大がかりなものでした。当然、原子炉を病院に設置することはできないため、治療法として成立させることは困難だと考えられていました。しかし住友重機械工業株式会社が病院への併設を現実的とする小型BNCT用加速器を開発したことで、この課題を解決できる見通しが立ちました。

ホウ素薬剤

私はステラケミファに長年勤務しており、医薬業界には携わったことがありませんでした。そのような私がステラケミファにステラファーマの立ち上げを提案する決め手になったのは、小野先生からBNCTによる耳下腺がん臨床研究の症例を見せてもらったことがきっかけです。耳下腺の治療は神経に接触する可能性があるため手術がしにくい場所ですが、BNCTで治療をしたところ高い有効性が確認できました。また、BNCTの治療には肌に黒い跡が残りにくいといった特徴があるため、患者さんのQOL向上にも貢献できると感じました。そして近畿経済産業局や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)からの支援も後押しとなり、親会社であるステラケミファとはまったく異なる業界ではありましたが、親会社は100%子会社としてステラファーマを法人設立する決意を固めてくれました。

さらに、BNCTという治療技術を日本から世界に発信したいという強い思いもあります。実はBNCTの研究開発は日本が世界をリードしており、国からも大きな期待が寄せられています。BNCTに取り組み、そうした期待に応えていくことは大きな社会的意義があると感じています。

ステラファーマの認知度向上をINCJがサポート

バイオ産業関連の展示会「BioJapan 2019」

ステラファーマは、NEDOやJST、日本医療研究開発機構(AMED)などの国の各機関から支援を受けています。今後の開発に向けてINCJにも相談しようと思っていたところ、国の機関のネットワークを通じて、INCJ側から声をかけていただきました。そこでBNCTの状況やステラファーマの優位性について説明し、最終的に支援を得られることが決まりました。

INCJからは資金面でのサポートだけでなく、ステラファーマの認知度向上のためにも取り組んでいただいています。たとえばINCJが投資先と共同出展した、バイオ産業関連の展示会「BioJapan 2019」では、BNCTやステラファーマが持つ技術について多くの来場者に説明することができました。

BNCTによるがん治療を日本から世界へ

ステラファーマを立ち上げた当初は、決してBNCTの知名度は高いとは言えませんでした。しかし現在では、がん治療にかかわる各学会でBNCTが取り上げられるようになり、BNCTに対する注目度は高くなっていると強く感じています。

今後はBNCTを世に広めることに加え、その治療の精度をさらに高めるための取り組みも加速させていきます。そのための研究もすでにスタートさせており、実現すればがん治療の世界でさらに大きな貢献ができるだろうと考えています。

今後もINCJ、さらには国の各機関との強固な関係性を維持し、日本発の治療法として世界に広めていくことが我々の大きな目標です。まったくの異業種から製薬業界に飛び込むというのは通常で考えればあり得ない話ですが、幸いにも私たちは国からさまざまな支援を受けられたことで、ここまで事業を進めることができました。それに報いるためにも、今後も努力を重ねて医療界に貢献していきたいと思います。

HOME
企業情報
事業情報
NEWS ROOM
投資実績
お問い合わせ