投資先事例: LINK-US

光行 潤 代表取締役

公開日:2019.02.14

超音波複合振動接合技術で「つなぐ」日本の製造業復活にかける思い

「金属を溶かさず、原子同士が引っ張り合う力で異なる金属同士をつなぐ」――そんな画期的な金属の接合技術を開発・製品化するLINK-US。この技術を使えば、リチウムイオン電池の発火や、パワーデバイスの発熱など、接合の問題により生じる様々な課題を解決することができ、低コストながらも安全性や信頼性を飛躍的に高めることが可能になります。開発の原動力には、日本の製造業を復活させたいという創業者の強い思いがあり、これがINCJの基本理念である「産業競争力強化への貢献」と重なりました。同社を創業した光行代表取締役にお話を伺いました。

金属を溶かさず超音波振動で接合を実現

LINK-USが開発した超音波複合振動接合技術は、既存の金属接合の課題を克服し、製品の安全性や信頼性を向上させ、ひいてはコスト削減まで実現できる革新的な技術と言えます。この技術では、溶接のように金属を溶かして接合するのではなく、原子同士が引き合う力によって直接接合するため、従来の接合方法で発生していたショート・発熱や材料の特性変化などの問題を起こさずに金属接合を実現できます。

LINK-USの接合技術は、超音波振動の軌跡を直線から楕円形に変更し、より強固な接合を実現することができます。従来の超音波接合では、直線的に折り返しながら振動させるため、直線軌道の両端に大きなダメージを与えてしまうという弱点がありましたが、LINK-USの技術はダメージを与えずに接合することに成功しました。現在、超音波複合振動接合技術は、EVに使用されるリチウムイオン電池やパワーデバイスの電極同士の接合などに適応した技術として注目を集めており、これからの接合を担う技術と言えるでしょう。

時代が求めた新しい接合技術の普及を目指して

超音波振動接合技術は、神奈川大学名誉教授辻野次郎丸博士が研究した技術です。この素晴らしい技術を知り、世の中に普及させたいという思いで2014年に起業したのがLINK-USです。
前職より液晶ディスプレイやLEDの製造装置に関わってきて、日本人のものづくりに対する丁寧さはよく理解しています。一方、中国や韓国に実際に出向いた際に、日本は商品としてパッケージ化する点が弱いと感じ、このままでは海外勢に負けてしまう、日本の製造業を盛り返したいという思いがきっかけとなり、起業しました。

また、電子機器における特定有害物質を規制するEUの「RoHS指令」が発令され、環境に優しい新しい接合技術が求められていた折でもありました。こうした流れの中で、超音波複合振動接合技術には大きな期待が寄せられていたのです。

ものづくり力の復活で日本の製造業の国際競争力を高める

起業の背景にあったのは、日本の製造業の衰退を食い止め、さらには盛り返したいという強い思いでした。例えば、かつて日本が最前線だったリチウムイオン電池の製造技術を、この超音波複合振動技術によって再び世界一の座に押し上げることができるかもしれません。日本のものづくりの力を復活させることで製造業の国際競争力を高めることは、INCJの基本理念と一致し、2018年2月に出資が決定しました。

INCJへのイメージが変わった、担当チームの支援

INCJとの接点を持つ前は、正直なところ、アドバイスが”上から目線”ではないかというイメージを持っていました。ところが、INCJの担当者に会って話をするうちに、当初のイメージとは異なり、同じ目標を掲げて「一緒にこの事業を立ち上げよう、成功させよう」と真摯に考えてくれることがわかりました。その出会いには大変感謝しています。投資決定後も変わらずに支援を続けていただいており、具体的には、顧客となる企業の紹介や、知財面・管理面などのアドバイス、管理面に強い人材の紹介など、実務的で有効なサポートが多くあります。

切削加工へ応用範囲を広げ、より大きなマーケットを創造

2018年秋には、超音波複動振動装置の20kHzに加えて、その倍の周波数を持つ40kHzの装置が完成しました。40kHzの装置は、毛髪の直径の1/3程度という、より微細で壊れやすい電極などの接合にも対応でき、IoTの普及による装置の小型化・省スペース化にも貢献できます。今後も順調に事業を加速させ、2022年にはIPOを目指しています。

また、将来的には、接合技術の開発で培ってきた知見を基に、接合だけでなく切削加工にまで事業を拡大する予定です。超音波複合振動接合技術により、今まで不可能とされてきた加工を可能にし、さらに処理時間の短縮にも役立てたいと考えています。この技術によって狙えるマーケットは、非常に大きいと期待しています。

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