2016.07.25
株式会社ABEJA:
人工知能をデータ解析プラットフォームを提供する 株式会社ABEJA への出資決定について
株式会社産業革新機構(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:勝又幹英、以下「INCJ」)は、人工知能のアプローチであるディープラーニング*1を活用したデータ解析プラットフォームを提供する株式会社ABEJA(本社:東京都港区、代表取締役社長CEO:岡田陽介、以下「ABEJA」)の第三者割当増資を引き受け、同社の事業の成長資金として5億円を上限とする出資を行うことを決定しました。また、今回、ABEJAには、アーキタイプベンチャーズ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:中嶋淳)が運用するアーキタイプベンチャーファンド投資事業有限責任組合も出資しています。
ABEJAは、2012年9月創業のベンチャー企業で、人工知能のアプローチであるディープラーニングを用いたクラウド上での仮想化技術に強みを持っています。同社は、この技術をベースにしたデータ解析プラットフォーム「ABEJA Platform」を2015年10月から小売・流通業界を中心に提供し、インストアアナリティクス*2を主要事業として展開しています。
具体的には、店舗内に設置したセンサーから取得した映像などの様々なデータを解析することにより、来店者数の計測や来店者の性別・年齢を判別するとともに、来店者の行動・滞在時間をヒートマップで可視化します。それらクライアントの店舗情報をディープラーニングを活用した独自の技術で分析・学習することにより、顧客の流入経路に合わせた店舗レイアウトの最適化や顧客の属性に合わせた品揃え、接客人員の最適配置などの定量的な提案が可能となります。その結果、従来「経験と勘」に頼ってきた店舗運営の課題を客観的データにより解決することが可能になります。
さらに、POS、発注、在庫情報などの既存の店舗管理システムから取得できる情報や天気予報やソーシャルメディア情報なども、「ABEJA Platform」に連携し解析することで、将来の売上予測や具体的な販売施策についても、提示できます。
クライアントにとっては、システム導入時のコストを低く抑えられるとともに、設置に要する期間も2週間程度であること、また使用方法も容易であるため、既に国内小売・流通大手企業を中心に2016年7月時点で、100店舗以上に導入しており、商品ラインアップの拡充や売り上げの向上、適切なスタッフ配置などで効果をあげています。
また、ビジネス対象も現在の小売・流通業界を中心としたものから、大型商業施設や駅構内、商店街、通学路等に広げ、サイネージ広告の効果最適化や人の流量に合わせた導線の改善、さらにエリア開発などの都市デザインや製造業界への進出等、ビジネス領域の拡大を進めています。
ABEJAが提供するサービスで用いられるディープラーニング技術は、全て同社の自社開発技術です。ABEJAでは、世界的権威の教授を顧問に迎えるなど、多くの国内トップクラスのアカデミア機関とも連携を取りながら、最先端技術を開発し具体的サービスに落とし込んでいます。
INCJは、ABEJAに対し、同社の事業の成長資金を供給するとともに、社外取締役を派遣します。INCJは、人工知能を活用し、世界でも数少ない商用化に結びつけたベンチャービジネスを資金・経営の両面から支援することで、小売・流通業界にとどまらず、他の業界も含めた産業構造の変革に貢献します。
*1:ディープラーニング
機械学習の一種で、人間が経験によって学習するのと同様に、人工知能がコンピューターに入力されたデータを経験と定義して、自ら学習して答えを導き出すコンピューティング技術のこと。
*2:インストアアナリティクス
実店舗内の顧客数や属性、滞在時間などを計測して分析すること。